初めてのリリースボックス
この日は、作りたての“リリースボックス”を初めて持参しました。果たして、うまく使うことができるのか。綺麗な写真が撮れるといいのですが……。
午後3時ごろ、突然雷が鳴りはじめ、その直後に25㎝ほどのイワナがかかりました。さっそくリリースボックスに入れようとしましたが、慌ててしまい、するりと逃げられてしまいました。そのころから雨脚も強まりはじめ、川には濁りが入り、枯れ葉や折れた枝が次々と流れてきました。みるみるうちに水かさも増してきたため、あわてて本流へと引き返しましたが、朝に渡った場所はすでに激流と化しており、とても渡れる状態ではありませんでした。
やむを得ず高巻きをして、少しでも渡れそうな場所を探しながら、再び沢へと降りました。濁りの入った激しい流れの浅そうなところを、拾った木の枝で探りながら、慎重に足を進め、ようやく渡ることができました。登山道まで戻り、車にたどり着いたときには、ふたりともすっかり疲れ切っていました。
この日、リリースボックスに魚を入れて撮影できたのは、写真〈上〉の15㎝ほどの小さなアマゴが一尾だけでした。それでも、美しく整った姿のアマゴで、初めてのボックスにはふさわしい一尾だったように思います。